学問の部屋です。
興味深い音楽フェスがあります。
作曲家の藤倉大さんがディレクターをつとめる" Born Creative Festival"略して「ボンクリ・フェス」。
東京芸術劇場をフルに使ってさまざまなジャンルの新しい音楽を一堂に集める1day フェスです。
本書はこのイベントで行われたレクチャーと、藤倉大さんとの対談、そして来場者とのQ&Aを集めた一冊です。
さて本レクチャーの講師は、
ギタリスト・作曲家の大友良英さん、
尺八奏者の藤原道山さん、
アクースモニウム・パフォーマーで電子音楽を手がける檜垣智也さん、
三味線奏者の本條秀慈郎さん、
という面々。
とにかく知らないことばかりで刺激的でした。特に印象に残った内容が2点あります。
ひとつは、日本が中国から伝来した楽器を受容する際の奇妙な美的感覚。
例えばこれも中国から伝わった箏(そう)は、中国ではいろんな音が出るように次々と改良されていったそうですが、日本では古い形のままで用いられているのだそう。
また、琉球の三線をへて入ってきた三味線は、わざわざより音が出にくいように、あるいは雑音を含むように改良されたのだとか。
もうひとつは、ミュージック・コンクレートの歴史。
創始者であるフランス人技師ピエール・シェフェールが、レコードの傷による針飛びを失敗ではなく音楽と捉えて以降、この系譜ははじまります。
面白いのは、環境音をそのまま音楽とみなしたという点ではなく、上記のような「失敗」による反復現象によって生まれるリズムの面白さに着目したところ。
これは今や、ミニマル・ミュージックの常套手段にもなっています。例えばある言語のフレーズの1断片をミックスしてそこから独特のリズムを取り出すなど。
【ピエール・シェフェール「雑音のエチュード」】
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