学問の部屋です。
ユニークな本を読みました。
副題に「100年生きる観葉植物の育て方」とあるとおり観葉植物のhow to本ですが、ちょっと類書がみあたりません。
著者の川原伸晃さんは観葉植物の専門店RENを営む方で、花材専門店の4代目、そして華道家でもあります。
いわば植物に関して幼い頃から実地でエリート教育を受けた人(とご自身同様のことをおっしゃってます)。
このコロナ禍で、観葉植物の売り上げは急激に伸びたといいます。けれども、植物がただ消費されている、つまり2、3年経って枯れたら捨てられるという現状を著者は憂えています。
うまく育てれば観葉植物は100年も生きるにもかかわらず。
そこで著者が提案するのが「プランツケア」という考え。
観葉植物を販売するだけでなく、栽培の相談に乗ったり、育てられなくなった植物の下取りを行ったり、枯死した植物の再生までも手がけています。いわば植物の医者のようなことまでアフターサービスとして行っています。
本書にも掲載されているそのケア論というのが、哲学的で面白い。本書で人類学者ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』や哲学者マルティン・ハイデガーの名前が登場するとは思いもよりませんでした。
人類とは異なる種類の知性を植物に見る植物学者や哲学者が少しずつ増えているようです。
もちろん本書は実用書としてもたいへん勉強になります。
風通しが意外にも大切なこと。
水やりのタイミング。
最近よく売られている無菌に近い土は言語道断だということ。むしろ腐植が不可欠であること。そこに住まう微生物との共生があってはじめて植物が健やかに育つということ。などなど。
先にも書いたように著者は華道家でもあり、観葉植物をかっこよく見せるための剪定方法まで解説してあります。
まさに至れり尽くせりの本です。植物の存在がぐっと身近に感じられます。
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