学問の部屋です。
今回ご紹介するのは、すべての中高生におすすめしたい1冊です。
と書くと、おそらく本書の内容を知る親御さんの大半がイヤがるかもしれません。
本書はいわば中高生に向けた哲学の本です。
大人の、あるいは親の、”現実”を重視した陳腐なフレーズに抵抗し、そこから逃れるための指南書です。
例えば、「そんなこと言ったって食べていけないでしょう」といった類のフレーズです。こうした決めつけの小さな積み重ねが、子どもたちのやる気を奪っていきます。
「うちの子、ぜんぜん勉強しないんですよ」と親が言う時、じつはそのような言葉を子どもに聞かせ続けたせいで、その子の気力が削がれてしまっているというケースも多々あると著者は述べています。
著者は福岡で唐人町寺子屋という塾をいとなみ、また単位制高校の校長でもあります。本書にはそこで関わった子どもたちとのエピソードが数多く紹介されています。
大人たちの言葉はあまりに単純化されていますが、それだけにかえって、彼ら彼女らの欲望をとても巧みに押し付ける言い回しがあります。
例えば、「この子は優しい子なんです」と言う時、それは悪気のない褒め言葉でもあるかもしれませんが、同時に呪いの言葉にもなりえます。子どもたちの抵抗力を奪う呪いの言葉。
あるいはポリティカル・コレクトネスという名のもとに大人たちがごっこ遊びをしている「正しさ」の暴力。
これも厄介です。現実はもっともっと複雑であるにもかかわらず。
子どもたちはそうした誰のものでもない言葉を大人より敏感に感じとっています。しかし立場としては圧倒的な弱者です。
それゆえ、子どもたちはどうにか抵抗し、ときに大人たちのストーリーから逃れなければなりません。
本書はそのヒントがいっぱい詰まった本です。しかし方法はひとつではなく、それぞれが独自の道を開いていくしかありません。
親を否定する、いわゆる精神的な親殺しをすることではじめてわかる親の愛というのもあるようです。
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