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執筆者の写真mayurransan

「別冊ele-king アート・リンゼイ———実験と官能の使徒」(ele-king books)


学問の部屋です。


この特集は珍しいので迷わず手に取りました。

アメリカ生まれ、ブラジル育ちの音楽家アート・リンゼイ特集です。


パンク・バンドである「DNA」、「ラウンジ・リザーズ」、「アンヴィシャス・ラバーズ」を経てソロ活動に入ります。以来、どの音楽ジャンルにもおさまらない独自の活動をつづけています。


それにともない子供時代に親しみ血肉となっているブラジル音楽にも接近していきます。

マリーザ・モンチ、カエターノ・ヴェローゾ、ガル・コスタなどのアルバム制作プロデュースも行っています。


私はパンクロック出身のミュージシャンの曲をほとんど聴くことはありませんが、アート・リンゼイは例外。"センスの塊"という人はいるもので、彼は紛れもなくその1人だと思います。だれにも真似することはできないでしょう。


彼はなんと正規の音楽教育をまったく受けたことがなく、音符も読めないそうです。

エレクトリックギターの奏法もまったくの我流。独特の、引っ掻くようなノイズの入り混じった音が特徴といえます。また、響きを消してパーカッションのように演奏することも多々あります。かなりリズム感が良い人です。


例えば、デレク・ベイリーのようにあえてコードを押さえることは避け(ひょっとするとチューニングもめちゃくちゃなのかもしれません)、その場の即興で現代音楽のような曲を立ち上げるのではなく、アート・リンゼイの場合には、ノイズの中にふと和音が浮かび上がる瞬間がとても魅惑的でクセになります。

それが抜群のリズム感の相乗効果で、アート・リンゼイとしか言いようのない音楽ジャンルを出現させます。


本書の目玉は、彼が生い立ちから語ったロング・インタビューと、カエターノ・ヴェローゾとの対話、他にも、菊地成孔、三宅純、大友良英といった音楽家たちが文章を寄せています。


アルバムの音源を添付しておきます。興味のある方はぜひ聴いてみてください。

1996年に発表されたこのソロアルバム"Mundo Civilizado"は、ボサノヴァとノイズミュージックが融合したようなユニークなテイストです。



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