学問の部屋です。
漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが、音大卒の編集者の導きによりさまざまな音楽大学に潜入します。
彼女自身は美術系の大学でデザインを学んだそう。
そんな彼女が、おもに現役音大生にインタビューしながら、音大の内部事情、そして何より音大生たちの奇妙な生態をおもしろおかしくルポします。
著者が潜入するのは、国立音楽大学、東京藝術大学、武蔵野音楽大学、東京音楽大学、洗足学園音楽大学。
ともあれ少しだけ音大生の生態を聞き知っている私としては、本書に書かれている内容や学生たちの信じられないような発言がけっして誇張ではないとわかり、そのぶんよけいに笑ってしまいます。
安定的に笑わせてくれるのがとくに声楽科の面々のエピソード。例えば、
「むしろ声楽科が一番音痴です。やたら声がいい音痴」
「声量を出せば出すほど音が取れなくなる」
と内部生たちは語ります。うすうすそうじゃないかと怪しんでいただけに、率直に言われると噴き出してしまいます。
音大卒のMinnie P.さんという方へのインタビューも、ある意味音大生の一面をよく表していて可笑しいです。
というのは、スーパーでパンを売るバイトで、ずっと立っていたら足が痛くて歩けなくなり、道を這って帰ったことがあるというのです(!)。
どこかでこっそり休めばいいのに、音大生は、とくに器楽科の学生はえてして真面目で、過度にガマン強い人が多いのでしょう。
本人はいたって本気。けっして笑わせようとしていないところがよけいに笑いを誘います。
まさに愛すべきエピソードのひとつです。
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