学問の部屋です。
フランスの詩人、ジャン・ド・ラ・フォンテーヌの短い教訓物語集です。必要があって読みましたが、思いのほか楽しめました。
もともと、ルイ14世の、6歳の王太子に捧げられた本だとのことです。子ども向けとはいえ、かなり皮肉がきいています。
もともとアンドレ・エレの挿絵とともにフランスで出版されたものを、マーガレット・ワイズ・ブラウンが英語で再話した絵本です。「ちいさなもみのき」や「ぼくにげちゃうよ」の作者として広く知られています。
とくに痩せた年寄りオオカミと肉付きのよい犬の話が印象に残りました。
両者が出会ったとき、オオカミは本能から、犬を「八つざきにしてやりたい」と思います。でも力のかいオオカミは、勝ち目がないと知り、したてに出て犬にお世辞をいいます。
そして、飢え死にの危険がなく暮らすにはどうすればよいか、犬に尋ねます。
飼い主の機嫌をとって家の門番をしていれば、いろんな食べ物が入るのだと犬は答えます。オオカミはそんな犬をあわれに思います。
よく見ると、犬の首の毛が擦り切れている。オオカミがきくと、首輪でつながれているせいだと犬が教えます。
「ぼくには、おいしいえさより、自由にはしれることのほうが、だいじなんだ。それを あきらめてまで、らくなくらしをしようとは おもわないね」
そう言って、オオカミは走り去ります。
このセリフを人間が言えば、何を青くさいことを、と思うむきもありそうです。でも、動物に仮託することで真実味が増します。さらに反射して、人間が直視したくない現実が浮き彫りになるしかけです。
オオカミはどこへ行ったのでしょうか。
Comments