学問の部屋です。
日本の"伝統音楽"をたどる本ではなく、自然のあるいは人工の音が聞こえてきそうな美術作品を集めた本でした。
雨音、虫の声、雪の声、雷鳴、渓流の瀬音、滝音、波音、潮騒、櫂の音、風音、松籟、鳥獣の鳴き声、花火、鬨の声、矢音、砧や機の音、楽の音、歌声、衣擦れ……
ページをめくるたびにいろいろな音が聞こえてきます。
聴覚に訴えてくる視覚的イメージばかりを集めるとは、とても面白い”縛り”だと思います。
かねてから日本美術についてもっと知りたいと思いながらも足踏みしていたところ、ユニークなアンソロジーと出会いました。ここからいろいろと興味が広がっていきそうです。
花鳥画や琳派に興味のある方におすすめかもしれません。
以下、本書に掲載されている作品のなかでもっとも気に入ったものです。
菱田春草「落葉」「紅葉山水」
小林柯白「那智滝」
竹内栖鳳「潮沙永日」「雨霽図」
村上華岳「二月の頃」
長谷川等伯「松林図屏風」「恵比寿大黒・花鳥図」
酒井抱一「夏秋草図屏風」
田中訥言「若竹鶺鴒図屏風」
歌川広重「梅に鶯」
鈴木其一「流水千鳥図」
岸連山「秋草群虫図」
中村大三郎「ピアノ」
上村松園「春宵」
とりわけ中村大三郎の屏風絵「ピアノ」は、花鳥風月を題材とした絵とはまた別の鮮烈なインパクトがあって印象的でした。紅白の着物をきた女性がグランドピアノを弾いている姿を描いたものです。解説によると、R.シューマンの「小さなロマンス」を演奏しているそうです。
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