学問の部屋です。
この地球以外の星に生命体はいるのでしょうか?
誰もが気になる謎かと思われます。
まず結論から書くと、いることはまず間違いないようです。
ひと昔前であれば、そんなことを言えばオカルト呼ばわりされたかもしれません。
科学的探究によって"いる"とほぼ断言できるようになったことは悦ばしいことだと思います。
今回本書をご紹介する動機は、そうした歓びを分かち合ってもらいたい、ただそれだけです。
では、他にも生命体がいるとしたら、なぜ私たち人類に会いにくることがないのでしょう。この、いわゆる「フェルミのパラドクス」にも本書は答えてくれます。
そもそも、生命体が生まれるにはどのような環境が必要なのでしょうか。それは地球のように、恒星からほどよい距離(ハビタブル・ゾーン)にある惑星です。その星では、液体の水が存在しうるからです。
地球を見てみましょう。深い深い海の底。著者の松井孝典さんによると、アルカリ熱水噴出孔の周りが、生命誕生の最有力候補だそうです。
タンパク質が生成するばかりか、その形状ゆえに天然のプロトン勾配が生じ、生命にとって欠かせない有機物の濃縮が実現します。
こうして、生命は思ったよりはたやすく誕生しそうです。
【アルカリ熱水噴出孔"ロストシティ"】
けれども本書から得られた知見では、生命の誕生と進化とは別問題であるということです。
単細胞生物から多細胞生物が生まれるまでに約20億年を要しています。単純な生物が進化を遂げるのは大変なのです。それに対し、多細胞生物じたいの進化により知的生命体であるわたしたちが生まれるまでには約5億年。
ひとつには酸素発生型光合成生物であるシアノバクテリアが誕生したことが決定的でした。それ自身が地球環境を激変させ、自身の数を増やしました。
もうひとつが、真核生物の誕生。細胞内に細胞小器官と核をそなえた生物です。
ここに、地球環境の激変(例えばスノーボール・アース)による淘汰圧が加わることにより、進化が促進されたというわけです。安定した環境のもとでは、進化はけっして起きないそうです。大量絶滅は、進化にとって欠かせないものでした。
ですから、ここ地球のように、進化が起きたことは、非常に稀な事態だったのです。
これがフェルミのパラドクスに対する答えです。
つまり、わたしたち人類と同時期に誕生し進化を遂げた知的生命体が存在する確率はかなり低いということになります。
大幅に進化した生命体に出会うことはないとしても、人類が生命の痕跡を発見するのは時間の問題でしょう。お隣の火星にはおそらく液体の水が存在していたそうですから、まずは火星でかもしれません。
こうして具体的に生命の誕生の可能性について知ると、人類はさして特別な存在ではない、それほど特別視する必要がないのだと思われ、正直ちょっとホッとしてしまうのは私だけでしょうか。
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