学問の部屋です。
10代の頃に初めてボサノヴァを聴いた時には、ブラジル・ポルトガル語のシンプルな歌詞と、複雑なコード(テンション・コードというみたいですね)のコントラストに仰天したものです。
ボサノヴァというジャンルはひとつの発明でした。その主な立役者が、アントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルト。
作曲家のジョビンは、フランス印象派(ドビュッシーやラヴェルなど)のエレガンスをブラジル・サンバの中に持ち込みました。
他方、内向的なジョアン・ジルベルトは、そんな西洋クラシックからの潮流とブラジルの伝統的な音楽を、ひたすら風呂場でギターを弾きながら濃縮していきます。
(商業的には)運良く、ジャズミュージシャンのスタン・ゲッツ(Sax)と制作した『ゲッツ/ジルベルト』というアルバムの大ヒットによって、ボサノヴァは爆発的に世界に広まります。
しかしジョアン・ジルベルトはその後、2008年の8月のリオ・デ・ジャネイロ公演を最後に公の場から姿を消します。
(演奏活動はしていて、生前に日本にも来たことがあるのですが、残念ながら行けず。ライヴ中に居眠りしたという噂も)
本作は、世間から姿を隠してしまったジョアン・ジルベルトに会いに行く、という主旨のドキュメンタリー映画です。
また、彼に会うためにリオ・デ・ジャネイロを訪れてけっきょく会えず、その後自殺してしまったドイツ人作家、マーク・フィッシャーの足跡をたどる旅でもあります。
さて、ジョルジュ・ガショ監督一行は、孤高のミュージシャンとぶじ出会えたのでしょうか?
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