学問の部屋です。
ストローブ=ユイレ監督による何とも贅沢なバッハ映画です。
1967年製作(ドイツ・イタリア合作 94分)。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハの2番目の妻である、アンナ・マグダレーナ・バッハを語り手に、夫の後半生を描いた作品です。
ヨハン・ゼバスチャンを演じているのはなんと、チェンバロ奏者のグスタフ・レオンハルトです。
再見してみて気がつきましたが、若き日のニコラス・アーノンクールも、ヴィオラ・ダ・ガンバを演奏しています。
なんといっても冒頭。沈黙の中から、『ブランデンブルク協奏曲第5番』の、あのかっこいいチェンバロ・ソロが突如立ち上がります。
このストローブ=ユイレ監督の例によって、本作も撮影と同時録音しているため、臨場感がきわだちます。うっかり外した音もそのまま記録されています。セリフはほとんどなく、ほとんど演奏だけで編まれた映画です。
なかでも印象的だったのが、アンナ・マグダレーナがチェンバロを練習する場面。そばにちょこんと幼い娘がすわってぬいぐるみで遊んでいます。
もうひとつは、ケーテン候が亡くなったとき、管楽器を伴奏に「喜びをもってこの世を去ろう」をしめやかに歌うアンナの場面から、『マタイ受難曲』の冒頭合唱に移行するシーン。鳥肌が立ちます。
ストローブ=ユイレの映画を見ると、なぜか画面に映し出されたものを言葉でただ記録したい衝動に駆られます。
【予告編】
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