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執筆者の写真mayurransan

『独学大全』読書猿(ダイヤモンド社)


学問の部屋です。


なにか新しいことを始めたい、あるいは勉強を始めたもののなかなか継続できないという人、もっと効率よく勉強したいetc...という方におすすめの本です。


以前紹介した、千葉雅也さんの『勉強の哲学』に対し、本書はより具体的な方法論/技術論です。


まず残念なお知らせですが本書は800ページ近くあります。ソフトカバーですが、正体は事典です。

通読するだけでもたいへんです。根性のある方は挑戦してみてください(ともあれそれに見合うだけの対価は得られると思いますが)。


しかし、本書でも言われているとおり、「「とにかく頑張る」は繰り返せない」。

どれだけ根性や継続力のある人でも、日常生活の些事や偶発事にいつかは負けてしまいます。


それでも、1度きりの人生、どうにか時間を捻出して何か新しく、しかも継続的に学びたいという方にとても役立つライフハックが本書には詰まっていました。


要は、思い通りにいかない怠惰で気まぐれな自分を自分からなるべく切り離し(対象化し)、上手にコントロールするコツが書かれています。


見たところ、本書の著者読書猿さんは、マメにアウトプットする(記録、図表化)、自分以外の人も巻き込んで学ぶ、自分の「意志」は無視し、まずは機械的に作業を始めるようにだましだまし持っていく、といった知恵をおおいに活用しているように見えます。


おそらく本書は人によってかなり多様な読み方ができるように思います。


参考までに私の読み方を一部ご紹介しておきます。

ちなみに私は本書を通読していません


まず、私は本書をいつでも手の届く場所に置いています。

本を開いたら目次を(たぶん人一倍)熟読します。そしてその日目にとまった箇所に飛んでいき、読みはじめ、飽きたらすぐにやめます。


さまざまな図表化のしかたも紹介されていますが、マメではない私は今のところどれも実践したことがありません。

私の場合、その作業が目的化してしまいがちだからです(もっとも、逆に図表化が適している人もいるはずです)。


何はともあれこれを少しずつ繰り返すうちに、本書のマップがマダラ模様に頭の中でできあがっていきます。


勉強の「動機づけ」ひとつとってみても詳細にわたっているので、とても方法を「使い分ける」などという器用な技は持ち合わせていません。だから思い出すためにそのつど本書にあたります。


ちなみに、新しいことを始める時の動機づけに、私が「私淑」(これに関する項目も本書にはあります)している人は70歳にしてギリシア語を始めた、というエピソードを思い出すようにしているのですが、

本書にも似たエピソードが紹介されていました。林達夫は、ロルカを読むために70にしてスペイン語を始めたそうです。70歳、という閾には何かあるのでしょうか!?


とくに私のおすすめのセクションは、13章の「記憶術」と、14章の「わからない」状態の扱い方です。これは受験生の方にもたいへん役立つと思います。数学、英語、日本語の独学法も具体的に紹介されています。


もうひとつ、本書のおかげで自分なりに方法化できそうだと自覚できたのが、数学者ポアンカレの「インキュベーション」という概念です。


これは、アイデアを得るために、あるいは何か答えを導き出したいときに集中的に作業を行なった後は、まったく別のことをする(しかもそのことについては考えない)ことで、かえって閃きが促されるというもの。


これは下手に考え続けるということをしないで済むぶん、気も楽になり、また日常のその他の作業を「雑事」と見なさなくて済むようにもなります。

考えあぐねている最中に良い案を閃いた経験など皆無に等しいということにも気がつきました。


と、自分に合ったこのようなライフハックが必ず埋もれているはず。気楽に本書のページをめくってみると何か自分だけの発見があるかもしれません。なお、本書は「座学」だけでなく、「楽器の練習」「スポーツ」などにも転用できると考えています。

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