学問の部屋です。
今を時めく作曲家、藤倉大さんのパワフルで濃密な半生を綴った自伝です。読むのをやめられず、一気に読みました。
恩田陸さん原作の映画『蜜蜂と遠雷』の中で、ピアノのコンクール課題曲として演奏される「春と修羅」という曲を作ったことでよく知られているのではないでしょうか。
ギターや三味線、太鼓など、楽器の特性をよく活かした多種多様な楽曲が面白く、私はよく聴いています。
ピエール・ブーレーズの弟子であり、いちおう「現代音楽」というジャンルに分類されるのかもしれませんが、そうした区分には収まりきらないスケールの曲ばかりです。
さて、藤倉さんは大阪の中学を卒業後、15歳で単身イギリスに渡り、ドーヴァー高校に入学します。すでに作曲家になるという目標があったようです。
日本でピアノを学んでいた頃から、クラシックの大作曲家とみなされる人たちの曲が冗長すぎるからと、楽譜をカットしたり音符を書き換えたりして演奏していたといいます。こういうのを"素質"というのかもしれません。
そこからして面白いのですが、イギリスに渡ってからも、学校制度をはじめ、いろいろな慣習やシステムを疑い、おかしいと思えば無視し、逆手に取り、ひたすら我が道をすすむさまはスリリングで痛快です。
例えば、作曲の授業の一環で作った曲のお披露目演奏会で、審査する先生たちに入場料を払わせたという図太いエピソードが個人的にお気に入りです。
こうしたエピソードが立て続けに現れるので、なまじっか小説を読むよりもよほど楽しめます。続編が読みたくなりますがそうもいかないので、氏のアクチュアルな活躍に注目しています。
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